ヘルシー長寿研究会2021(7)高齢期就労と健康の関係性

●社会保障費・・・増
●家族の負担・・・増
●労働力人口・・・減

少子高齢化など社会構造の急激な変化により、医療や介護などの社会保障費は増え続け、現役世代の負担増も限界があり、この問題に対応することが重要な政策課題となっています。
対策の一つとして、より多くの高齢者に社会・経済の支え手になってもらうために、退職時期を遅らせ、高齢者の就労を促進しようとする動きがあります。
本年(2021年)4月に施行された「改正高年齢者雇用安定法」では、希望者が70歳まで働ける機会の確保を企業の努力義務とするなど「70歳現役社会」が到来しつつあります。
働く人たちのイラスト(高齢者).png
そのような状況下、高齢期就労による個人の健康への影響は、まだよくわかっていないことが多いようです。
ただし、少子高齢化の背景により高齢期就労と健康の関係性を解明していくことは、健康長寿社会を目指す上でも重要な課題とされており、研究が進んでいます。
ある研究では、定年後でも働く人は仕事を辞めた人に比べて健康が維持され、退職した人は健康の自覚、生活機能がともに低下していくとの研究結果を報告していました。
ただし、この「定年後就労の健康への好影響」の研究分析結果は、自営業以外の就業者(雇用者)においてのみ確認されたとのことです。
企業では、事業者に、医師による健康診断を労働者に対して実施する法的義務(労働安全衛生法)があることが、その理由の1つではないかと考えられています。
今後の政策の課題として、自営業者をはじめとした、企業における保健指導の対象とならない人々においても、健康診断の受診率を高めるなど、健康の維持・改善のための施策をより一層推進していく必要があるとしています。

●参照文献●
JAHEAD研究グループ;長寿社会における中高年者の暮らし方の調査 【第10回】高齢期に働くことは健康に良いか 」

働く高齢者.png

なぁるほど、「定年後も働く人」は、「定年後は仕事しない人」よりも健康が維持されているとの研究結果ですが、これはあくまで「労働安全衛生法」に守られた「就業者」でのみ確認され、自営業者などは対象外だとの事ですので、すべての日本国民において高齢者就労が健康に良いとは、今の段階では言えないということでしょう。
  

65歳以上の高齢者に対して「就労の動機」について3群(生きがい目的群、生きがい+金銭目的群、金銭目的群)に分類して調査解析しています。

●生きがい目的
「健康のため」
「生きがいを得たい」
「社会貢献・社会とのつながり」

●金銭目的
「生活のための収入が欲しい」
「借金の返済のため」
「小遣い程度の収入が欲しい」

解析の結果、金銭のみを就労の目的としている者では、生きがいを目的としている者に比べて2年後の主観的健康感の悪化リスクが1.42倍、生活機能悪化リスクが1.55倍高いことが示されました。
しかし、生きがい目的で就労している者と生きがいと金銭の両方を目的としている者との間には健康悪化リスクに差は見られませんでした。   
本研究の結果から、就労の動機が金銭のみである者においては就労による健康効果が得られていない可能性が示されました。
金銭のみを就労目的としている者では、より多くの収入を得るために、長時間・危険・重労働などによる身体的および精神的負担が大きいため、健康悪化リスクが高いと考えられます。
一方、生きがいと金銭の両方を目的としている者では、必ずしも金銭が上位の就労動機ではないため、就労によるストレスは小さく、健康悪化リスクが生きがい目的の高齢就労者と同等であることが示唆されました。
以上から、高齢期就労による健康効果を高めるには、いきがいを実感できる(例、周囲に、直接感謝されるなど、人や社会の役に立っていることが実感しやすいような)業務に携わることが重要です。
また、金銭目的のみで働く高齢者に対しては、就労支援だけではなく、生活全般や健康についての相談や貧困対策などのセーフティネットが必要であるといえます。

【参考文献】
「地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター;<プレスリリース>金銭目的のみの就労は高齢期の就労による健康効果を減弱させる ―「いきがい」をもてる就労が重要― 」より、抜粋引用させていただきました。



上記引用元の研究結果について、金銭のみを目的に働く人は、より多くの収入を得るため

「長時間」
「危険」
「重労働」

・・・の仕事に従事して心身の負担が大きい可能性があるので、健康に働くための相談窓口や貧困対策などのセーフティーネットの充実が必要だとしています。
セーフティーネット.jpg

さて、ここまで「高齢者就労と健康の関係性」について、2つの研究結果を見てまいりました。
1つ目の「労働衛生安全法に守られた就業者のみ限定」での調査では、「定年後就労は健康に寄与する」との結果がありました。
一方で2つ目の「65歳以上の就労高齢者」に対して行われた調査では、「就労の目的」によって健康リスクが異なることが分かりました。
つまり、あくまで私の想像というか、皆さまもご想定のとおり、「健康ならば高齢期もできるだけ働いたほうが健康に寄与する」その一方で、「老齢年金が少ない自営業者などの高齢者は、生活のためにストレスのかかる働き方をしているのではないか」ということですね。
現在58歳の私自身も「老齢年金が少ない層」に属しますので他人事ではなく、今後の60代、そしてそれ以降をどのように過ごしていくのか喫緊の課題でございます。

元気なお爺さんのイラスト.png

今、私が漠然と考えている自分自身の60代の働き方として

■縮小しながら自営業務を継続
■無理のない範囲で別途就労
■健康維持について常に心掛ける
■年金は繰り下げ支給を目指す

ざっくばらんに言いますと、健康維持を心掛けて長く働いて、できるだけ年金受給を少しでも先延ばしすることで受給手取り額を増やすことを目指したいと思っています。
自営業務の「縮小」は「業務量ストレスの減少」のため、そして「別途就労」は収入元の分散や社会とのかかわりのためです。

追加の仕事.png

さて、どうなりますか。。。。。。


ドミノフレイル.png

さ。

私自身もいよいよ還暦が近づいてまいりましたので、当シリーズ「ヘルシー長寿研究会」では、来年以降も「高齢者就労と健康」について特集を組んでまいりたいと存じます。

お楽しみに!。。。。で、ございます。。。か?
【ご参照動画】

「4人に1人」が働く高齢者!65歳以上の人口過去最多
【マスクにゃんニュース】
【動画出典; ANNnewsCH より、共有埋込コードにてリンクさせていただきました。】



年金受給は何歳からがお得?来年4月の新制度を解説(2021年10月28日)
【動画出典; ANNnewsCH より、共有埋込コードにてリンクさせていただきました。】




「ヘルシー長寿研究会2021」では、「高齢化」&「少子化」そして「多死社会」を迎えていく時代の中で、どのように「ヘルシー&長寿」を過ごしていけばいいのか調べて、読者の皆さまとお役立ち情報などを共有できたらと考えて記事作成してまいります。


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