沖縄県男性について「働き盛りの若い世代が多く早逝している。これが平均寿命の順位を急落させている最大の理由です」と、沖縄県の担当者さんが語られた「沖縄クライシス」問題。
上表のとおり、沖縄県男性の平均寿命の都道府県順位はここ30年間(1980~2015)で、1位から36位へと急落しています。
ただし「平均寿命そのもの」については、下表のとおり、沖縄県男性においても平均寿命は年齢が上がっていますが、かつては全国の平均寿命を上回っていたのに現在は下回っています。
沖縄県男性について「35歳~59歳までの働き盛りの男性の死亡率」では、5歳別に死亡率の低い県からの順位では、沖縄県は43位から46位と、ほぼ最下位に近い数値、つまり「死亡率が高い」ことが「沖縄クライシス(都道府県別、平均寿命順位の急降下)」問題である一方、逆に、80歳以上の高齢者層においては、何と死亡率の低い県からの順位で1位であり、「死亡率の統計」のうえでは沖縄は、全国1ご高齢者が健康であると言えるのでありましょう。

・・・と、ここまでは前回記事のおさらいでございます。
今回は、沖縄のご高齢者が全国1お元気であられる一因は何か、食生活からのアプローチで沖縄の伝統食について調べてみました。
沖縄そば(左)、ゴーヤーチャンプルー(右)とオリオンビール(右上)は、いずれも沖縄の食卓で定番
By Blue Lotus - Flickr, CC 表示 2.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=1213272特に中国からの影響が強く、「医食同源」あるいは「薬食同源」の思想がしっかりと根付いています。沖縄に伝わる料理は「琉球料理」とよばれ、首里城の中で食べられていた「宮廷料理」と、一般の人たちが食べていた「庶民料理」に分けられます。
貧しい生活の中から自然に生み出された庶民の料理は、生活の知恵を生かしたもので、無駄を省き、値段や栄養が、バランスよく整えられたものだといえます。
沖縄のお年寄りは、現在でも食べ物のことを方言で「クスイムン」とか「ヌチグスイ」と言います。これは「薬」あるいは「命の薬」といったような意味で、どちらも食事は病気を直すことだという考え方だといえます。1.食材「亜熱帯の風土に根ざした野菜、魚介、海藻をはじめ豆腐、豚肉を多く用いるともに、外来の昆布やスンシー(しなちく)等を巧みに取り入れて定着させています。」2.調理法「脂を用いた汁物、煮物、炒め物、揚げ物が多く、茹で汁はだしとして用いるなど、食材を無駄なく活用するのも特徴です。生食は少ないです。」3.味わい(だし)「豚のだしとかつをだしをベースに、肉、魚介、昆布、豚脂などから複合的に生まれる深い旨みやコクが料理の基本の基調をなしています。」4.栄養「食材の相性を工夫し、栄養的にもよいとされる自然の素材や煎じ物(シンジムン)が多く用いられ、医食同源の考えが根づいています。」【参考文献および出典】沖縄県HP、沖縄こどもランド「沖縄の食文化」国立大学法人琉球大学HP、ウエルネス研究分野「沖縄健康長寿ダイエットプログラム」
以上が、沖縄の伝統食「琉球料理」の特徴のようです。
中国の影響を強く受けた沖縄では、日本本土と異なり「豚肉」が貴重なたんぱく源として重宝されていたようです。
「豚肉」は、煮ることによって「ゆでこぼし」で塩だけでなく脂も同時に抜いているようです。
ただし、戦前までは庶民の生活は貧しく豚肉を食べることはまれで、主食は食物繊維豊富な炭水化物である「さつま芋」であったようです。
琉球大学が沖縄の長寿者の食生活を調査した結果や、その他、沖縄県の食文化についての各解説を読みますと、沖縄の「長寿伝統食」とは、地域の食材、食物を、相性と効率が工夫された調理法で定着していった「郷土料理」になるのではないかと、スリムちゃんは思います。
●食物繊維が豊富に含まれる食物(サツマイモ、根菜類、ソバ)を主食とした、未精製炭水化物を摂取
●筋力が衰える高齢期になっても豚肉、豆腐(島豆腐)など、良質なタンパク質を摂取
●地域や外来の海藻類(もずく、昆布など)など、食物繊維ビタミンミネラルを摂取
●琉球石灰岩の土壌と紫外線の量が多い太陽のもとで育ったミネラル豊富で抗酸化力が高い「島野菜」を摂取
県民の4分の1が犠牲となったという沖縄戦を経て、戦後すぐにアメリカ統治下の影響をダイレクトに受けた沖縄・・・
沖縄の長寿を支えてきた「芋と野菜が中心の食生活」からアメリカ軍とともにハンバーガーやステーキ、スパムなどの動物脂肪・獣肉・ファストフード文化が一気に加速度的に有無を言わさず流入してきました。
その結果、今の働き盛り世代は既に子供のころから加工食品や動物性脂肪を多く摂取する食生活がベースとなり、「沖縄クライシス(都道府県別、平均寿命順位の急降下)」問題が浮上したのでありましょう。
沖縄県では、県民の健康づくり 運動「健康おきなわ21」を推進しています。
その取り組みにおいて、「沖縄の伝統的な食生活」の比較と共に、現代に生きる人々がどのような食生活をおくれば健康になれるかをご提案されております。
【画像出典;沖縄県保健医療部健康長寿課HP「健康おきなわ21」より引用させていただきました。】
上記画像内記事のとおり、かつての伝統的な食事を学び現代に取り入れていくことは、沖縄に限らず、各地域の風土に根ざした食材を生かした食生活がヘルシー長寿の基本となるのではないでしょうか、と、私「スリム鳴造」は、今回の記事作成を通じて感じることができました。
(もちろん、健康や長寿は「食生活」だけに影響されるものではなく、運動や睡眠、ストレスなどその他要因も関係するもので、「健康おきなわ21」では、食生活以外の健康づくりについて色々なご提案をされていることを付け加えておきます。)
【画像出典;スリム鳴造蔵書「美味しんぼ28巻、長寿料理対決!!」より抜粋引用させていただきました。】
さて、21世紀の現在、健康的な長寿のための実に様々な「食事法」が紹介されています。
その中で、長寿食として最近話題になっている食事法のひとつに、地中海沿岸諸国の伝統的な食事「地中海食」があります。
オリーブオイル、全粒穀物、野菜、果物、豆、ナッツが豊富で、チーズとヨーグルトは頻繁に食され、魚も食されるが、肉、鳥、菓子の消費は控えめである。また赤ワインも適度に飲まれる。地中海食で多用されるオリーブオイルや魚介類には、多価不飽和脂肪酸が豊富に含まれる。記憶能力および健康に対する良好な研究結果が繰り返し報告されている。
果物や野菜を豊富に摂取し、料理は乳製品や肉よりも「魚」を多く使い、そして未精製の穀物(ナッツ、豆類、全粒粉)などをよく使う点において「地中海食」は、沖縄や日本の伝統食とよく似ているものと思われます。
ですので、どこかの国や地域の食事が特別に健康や長寿に効果があるとかよりも「その地域に根差した食事を、そこに暮らす住人の多くが今もメインとして食べ続けているか」も重要である、と、スリムちゃんは考えます。
20世紀の第二次世界大戦とその後の状況について、特に沖縄は日本でも最も激動の時代、あまりに凄まじい変化の波が、いわば強制的に短期間に一気にやって来て、平穏な平和な日常な暮らしが大きく揺さぶられたことも、「沖縄クライシス」の根深くて哀しい遠因になっているものと思われます。
しかし、21世紀の今、地域に根ざした「琉球料理」が見直されて、官民・産学・医療機関そして県民総意で「伝統的な食事を取り入れた現代の健康長寿食」を推進しておられるので、歴史的に元々「医食同源」の考えが食事法、調理法のベースになっている沖縄ですので、状況は改善していくことでしょう。
ヘルシー長寿研究会【2019敬老の日】シリーズ
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(5.沖縄の長寿伝統食とは?)
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